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2022/12/26 13:58

1.開業130周年 “しまぬき”の歩み


東北地方で古くから親しまれている伝統工芸品“こけし”。その“こけし”を、現代に合わせた親しみやすい形にアップデートした商品が“こけし缶”です。


“こけし缶”を企画し、取り扱っているのは、宮城県仙台市で活動している“こけしのしまぬき”。同店の店主である5代目・島貫昭彦さんは、2015年に、それまで交流のあった工人(こうじん=こけし職人)に声をかけ、“こけし缶”を開発し、発売しました。




“こけしのしまぬき”がその歩みを始めたのは、明治25年だったと昭彦さんは話します。


「当時は“島貫煙草店”という名前で、煙草やお菓子を扱っていたんです。そのため、公的な鑑札があり書類が残っているんですよね。また建物を建てた際に使ったと思われる書類も残っていて、そちらにも同様に明治25年(1892年)という記述がされています。なので今年(2022年)はちょうど開業130年にあたりますね。」




やがて地元の工芸技術を用いた、煙草盆などの手仕事による喫煙具や商品を扱っていくように。そうして、第一次こけしブームの影響もあり、伝統工芸品である“こけし”の取り扱いが始まったのです。


当時はまだ終戦直後の昭和時代。

“こけし”は、郷土玩具として親しまれていた時代を終え、一部の人々に趣味のコレクションとして親しまれていました。その状況を変えたのは、戦後に起こった旅行ブームと、それによって起こった、第二次こけしブーム。“こけし”はお土産として注目され、和雑貨のようなものとして捉えられるようになりました。




2.届けたいのはこけしの意味 絶頂と地獄を歩み、生まれた想い


昭彦さんが働き始めた頃“しまぬき”はすでに“こけしのしまぬき”となり、多くの“こけし”を取り扱っていました。

第二次こけしブームを経験した昭彦さんは当時の様子をこう振り返ります。


「まさに絶頂から地獄へ、といった状況でした。

私は嫁いできたのでその前の状況は分かりませんが、少なくとも第二次こけしブームの絶頂期は今と比べて二桁も違う売り上げを記録していたんです。しかし昭和40年以降はだんだんとブームが失速し、売り上げも減少していきました。工人さんのなかには現場から離れられた方もいらっしゃったり……。大変でしたね。」


そうして活動をしていくなかで“こけし文化”、そして工人さんや昭彦さんご自身といった、“こけし”を生業とする人々のこれからについて考えが深まっていったと言います。


「宮城県内で育った私にとって“こけし”は、床の間やステレオの上など、一家に必ず10本ほどはある、身近なものでした。きっと宮城の他のお宅もそうだと思います。

いまでもその印象は変わっていませんし、これからも変わることはないでしょう。『怖い』とおっしゃる方の気持ちもわかりますけどね(笑)




一方で、私と同じ世代が多い工人さんたちのこれからについて、考えることも多くなりました。

第二次こけしブームが去り、売り上げが落ちる状況で、私たちはどうすればいいのか?“こけし”の可愛さ、そして伝統といった魅力を伝えて買っていただくには、何をすればいいのか?


やがて第三次こけしブームが到来した際には、伝統的な“こけし”を扱うものとして、表層的な可愛さなどの外見だけでなく、積み重ねられてきた想いや歴史といった『“こけし”の意味を届けていきたい』と思うようになっていきました。」


3.“こけし缶”で“こけし”の伝統を楽しんでほしい


そうして開発されたのが“こけし缶”という商品でした。


「当時は東日本大震災の影響で東北への注目が高まっていた状況で、うちで扱っている“こけし”もたくさんの注文をいただきました。


ただその流れに違和感があったんです。

“こけし”には“伝統こけし”と“創作こけし”の2種類があります。そのうち“伝統こけし”は様々な決め事があり、師弟関係のもと技術を磨き、師匠に認められて初めて制作できるものなのです。

しかし、当時は“こけし”だけが取り上げられており、そういった伝統が置き去りになってしまいそうでした。




伝統を伝えつつ、トレンドを押さえてたくさんの方に受け入れていただくにはどうすればいいか。

結果、“伝統こけし”を限りなく小さくし、缶に封入する“こけし缶”という商品が生まれたんです。」


昭彦さんの言葉にあるように、“こけし缶”に用いられているのは、“伝統こけし”の規格に則った、親しみやすい小さなサイズの“こけし”。そのため革新的な商品でありつつも工人さんには快く受け入れていただいたといいます。

また“こけし缶”のなかに緩衝材として用いられている木くずは、実際に“こけし”を制作した際に出た削りかす。

実はここにも“伝統こけし”として、“こけし缶”を楽しむポイントが存在しています。


「“こけし”の制作において工人は、それぞれこだわりの刃物を用います。この刃物をどれだけ鋭く仕上げられるか。そしてなだらかな曲線を持つ“こけし”を作り上げられるか。それが工人さんの腕の見せ所なんです。




それを知っているある工人さんは、わざわざ削りかすだけを、“こけし”とは別に作ってくださっていました。もう亡くなってしまったのですが……。

私も持たせてもらったことがあるのですが、実力のある工人さんの刃物は、木に当てただけでスーと削れて、舞い上がっていくんですよ。


なので“こけし缶”がお手元に届いた際には、削りかすの質感も楽しんでいただければと思いますね。」


4.生業としての“こけし”


これからについて伺うと、

「“こけし”の工人も我々も、生業として“こけし”に携わっています。なので“こけし”で生活が成り立たなければいけません。“こけし”を作ってくださる工人さんたちが安定して暮らしいけるよう、これからも魅力的な発信を続けていけたらと思いますね。」

と、昭彦さんは話してくださりました。


「ただ中身が可愛いだけでなく、もっと“こけし”そのものの付加価値を上げていきたい」と話す昭彦さん。

その姿に、“こけし文化”の一つの未来が垣間見えました。




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